銀行が融資しない会社に“最後のアドバイス”をした話:アンティークカー輸入業の苦境と打開策

事業計画
A closeup shot of a vehicle on a dry field under a cloudy sky

昔、行政の専門家として中小企業支援をしていた頃、ある社長が相談に来ました。
銀行から追加融資が受けられない状態の企業でしたが、銀行から「相談に乗ってあげてほしい」と依頼があり、面談することになったのです。


アンティークカーディーラーの相談内容

業態は「アンティークカーディーラー」。これまで一台も輸入実績がなく、現在アメリカで組み立て中の車があるという話でした。
しかし部品が足りず、完成していないとのこと。しかも、その車はアメリカ在住の知人(日本人)のもとに保管され、毎月保管料を支払っているという状況でした。

完成すれば輸入して販売できるとの話でしたが、実際は資金ショートに陥っており、社長自身がコンビニでアルバイトをしている状態。
銀行が融資に応じないのも理解できる案件でした。


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もう一つの事例:整体事業の相談

同じようなパターンで、整体サービスを運営する個人事業主からも相談を受けたことがあります。
年収は100万円以下、立地は駅から遠く、リピーターもほとんどいない。さらに競合との差別化もできていない状態でした。

「どうすれば売上が上がるか?」という相談でしたが、実際にはターゲットも明確でなく、将来どうなりたいのかも決まっていませんでした。
これでは事業が成長するはずがありません。


2つのケースに共通する問題点

この2つのパターンに共通していたのは、将来像(目指す姿)が明確でないということです。
経営者自身が「どんな会社にしたいか」「どんな生活を送りたいか」を描けていないため、目の前の問題に振り回されていました。


アンティークカーディーラーへのアドバイス

アンティークカーディーラーの社長は「1台輸入すれば500万円で売れるだろう」と話していました。
しかし、現実的に考えると以下のようなコストが発生します。

・組み立てや部品購入ですでに約250万円
・アメリカでの保管料
・輸送費・関税などの輸入コスト
・販売先が未確定(展示・宣伝コスト)

これでは500万円の売上が立っても利益が出るとは限りません。
さらに、車の完成写真やシリアル番号を知人から一度も送ってもらっていないという話を聞き、私はまず「現地の写真と証拠を必ず確認するように」とアドバイスしました。

ビジネスモデルとしては、車を丸ごと輸入するよりも、部品単位で販売して売れた分だけ輸入する方式の方が安全です。
キャッシュフローを安定させながら、実績を積むことができます。

また、もし社長が将来的に「複数台を展示販売する店舗を持ちたい」と考えているなら、まずは足元でキャッシュを稼げる関連ビジネスを立ち上げるべきです。
たとえば中古車の整備・輸出・パーツ販売など、短期で資金を回せる仕組みを作ることが先決です。


整体事業者へのアドバイス

整体事業の社長も同様でした。年収100万円以下で家賃が高く、赤字状態。立地も悪く、リピーターも少ない。
しかも「食べていけるようになりたい」という漠然とした目標しかなく、誰に・どんな価値を届けたいのかが不明確でした。

私は、一度事業を停止して成功しているチェーン店で修業することを提案しました。
「何が売れていて、どうやって集客しているのか」を現場で学び、再び独立する時に“勝てる経営”を設計すべきだからです。

また、整体業は口コミと信頼が命です。宣伝をしなくても自然に紹介が起きるような仕組みを作ることが、安定経営への第一歩です。


経営の本質は「将来像の明確化」

中小企業の社長が日々の問題に追われている原因は、実は「将来像の不在」です。
将来像が定まっていないと、すべての出来事が“問題(Problem)”として重くのしかかります。
しかし、将来像が明確になっていれば、それは“課題(Challenge)”に変わり、取り組むモチベーションも高まります。

資金繰りを楽にしたいというだけでは、また次の問題にぶつかります。
大切なのは「どんな会社を作りたいのか」「何を成し遂げたいのか」という未来像を描くことです。
その理想像があれば、今目の前の悩みも前進の糧になります。


まとめ:立ち止まって、理想の未来を描こう

経営は日々の数字だけでなく、“志”が方向を決めます。
いま一度、立ち止まって自分に問いかけてみてください。

どんな未来を実現したいのか?
そのために今、何をすべきなのか?

理想像が明確になれば、日々の問題が「成長の課題」に変わり、経営が前向きになります。
経営者も個人事業主も、ぜひ一度「自分の未来設計」を見直してみてください。

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