事業を開始する、あるいは新機材を導入するに際しては、起業家、経営者の皆さんは金融機関、知り合い、投資家などから資金調達する方法を真っ先に考えますか?現在資金調達の方法は色々ありますが、その一つに国や地方自治体、商工会議所など行政サービスから受けられる資金調達もあります。例えば、各省庁が公募している補助金や助成金、給付金などです。まず、補助金って聞くと難しそうですが、要は『国や自治体が応援したい事業に、条件を満たせばお金を出してくれる』という仕組みなんです。もちろん審査はありますけどね。補助金には申請締め切りまでに公募要領に従った事業計画を提出して、国や行政側で内容を検討して、政策に合った事業に対して補助金が支給されます。補助率は100%ではなく企業規模により機器購入費などの2/3や1/2を交付します。助成金はもう少しシンプルで、『条件をクリアすればほぼもらえるお金』なんです。特に雇用関係で社労士さんがよく関わる分野ですね。なので、申請書内容の審査ではなく、要件を満たしているかどうかが問われる資金調達方法になります。社労士が主体で申請することが多いものだと思われます。給付金はさらに分かりやすくて、条件に当てはまれば自動的にもらえるお金です。コロナのときの一律10万円、覚えてますよね?あれがまさに給付金です。コロナ禍において緊急事態対応として出されたので、記憶に新しい方も多いと思います。この補助金、助成金、給付金の中で企業が新規事業へ進出して成長していくにあたって、利用すべきはやはり補助金だと経営コンサルティング事業を経営する者としては考えます。補助金がコンサルタントのトップである経済産業省が主体というのもありますが、補助金を申請するにあたってその事業が本当に将来成長し、企業の稼ぐ柱に成り得るかが自社でも検証できるからです。そして、補助金は国や行政にとっても投資案件としてみるため、その魅力が第三者に伝わらないと補助金、つまり投資案件として却下されるということです。

経営コンサルティング事業をしていると企業経営者が補助金の相談をしてくることが多くあります。しかし、その大半が「機器の更新のため補助金が利用できると聞いた」「メーカーが新しい機器を購入するのに補助金が利用できると言っている」など補助金本来の目的を考えない問い合わせが多く、真剣に新規事業について考えてから補助金支援を依頼してくる経営者の方が少ないのが現状です。補助金が採択(補助金交付の内定のようなもの)されて、交付申請で補助金額を確定させたとしても、本来の補助金向けの事業計画が実態に基づかない計画であれば、投資した国や行政も大損になりますし(法人税などで回収できない)、事業者にとっても1/3、1/2の資金やそれに関わった人や時間が無駄になりますね。良くコンサルタントをしていると事業計画をすべて作成してもらって、申請書を添付して以前申請したという経営者の方に遭遇しますが、そもそもの補助金の意味を理解した上で申請すべきであり、理解しないまま申請している企業が大多数なので補助金事業の成果があまり上がってないように思います。以下実際に補助金申請に必要な概要を説明しますね。
補助金の採択から支払、その後の事業化報告までの流れ
補助金は色々ありますが、代表例としては中小企業庁が募集する「ものづくり補助金」が有名なので、こちらを例にとって解説します。ものづくり補助金とは新規事業、サービスを実施するにあたって、新しく機器を購入することや専門家支援を受けるに際してかかるコストの2/3、1/2を企業規模や条件によって支援するという国の事業です。公募される日から申請期日まで公募されており、公募要領に補助金の概要と必要な書類が明記されてます。従来は紙などで申請も受け付けてましたが、現在電子申請のみの対応となってます。要件の概要としては、新規事業やサービスを実施する事業であり、営業利益+減価償却費+人件費=付加価値額として、これを年率3%以上上昇させる事業であること。毎年3月末(国の事業年度末基準)において最低賃金+30円を満たし、更に各行政の最低賃金アップ率(2019年からの5年間)を超えるアップをしていくことなどが条件になっております。これは中小企業の成長には人件費アップが欠かせないこと、投資案件なので減価償却費が大きい案件であること、更に人件費がかかっても利益が出てくる事業であることが求められるということです。公募要領ごとに異なっているので、最終的な要件は自社が申請する公募要領に沿った条件になります。必要書類は直近2期の決算書、法人概況説明書などがありますが、従業員の賃金に対する宣誓書やものづくり補助金を使用して購入した機器などをみだりに処分しないようにするための宣誓書などもあります。従来は新規事業、サービスだけでなく生産性向上枠というのがあり、機器の更新により生産性が向上することを示すことも補助金対象としてましたが、基本的に生産性向上で申請した場合に採択されるケースは低かったように感じます。やはり新規ビジネスでの差別化が中秋企業には必須だと国、行政が考え始めている証左かもしれません。また、電子申請のみというのはデジタル化に追従できない中小企業への支援を実施しないとする国や行政の沈黙によるメッセージのように感じます。日本の企業の99.7%が中小企業と言われてますが、全社を助けるという方針はコロナ禍以降急激に変わり、淘汰の時代に入った気がします。
ものづくり補助金申請は公募開始から申請書提出締切日までに、公募要領で要求されている書類を提出して申請を完了します。申請後4カ月くらいかけて、事務局で書類内容を審査し、ものづくり補助金政策と合致しており、補助金を交付するに値する事業かどうかが判断され、補助金を拠出しべき事業者に対して採択結果を通知します。採択された事業者は正式見積書を入手して交付申請を実施、最終的に事務局が承認すれば交付決定となり、この決定通知が為された以降に実際に機器発注や専門家への発注できます。交付決定前に発注したものは補助金対象外となりますので、注意が必要です。交付決定後に、機器などを発注し、実際に機器を導入してから補助金申請書に掛かれた事業を開始するための体制を構築していきます。これを補助事業と呼びます。この補助事業が完了した後に、機器導入写真や機器代金の支払い証明、更に補助事業中に実際に新規事業を開始するにあたって準備したことを、補助金申請書を元に報告します。これが実績報告書です。交付決定から一定期間内に補助事業が完了していなければ遂行状況報告書が求められます。実績報告書の内容を事務局で確認し書類上の確認を終えた後に、実際に審査員が企業を訪問して補助事業の実施状況の実況見分が実施されます。この審査員審査をクリアして初めて補助金が事業者に支払われます。尚、補助事業を完了して実績報告書を提出し、審査員の検査を受けた後に、新規事業を開始して良いかを事務局に確認してからでないと新規事業を勝手に始めることは原則許されていないので注意が必要です。また、補助金が事務局から振り込まれた後、毎年3月期締め、5月末まで事業化状況報告を5~6年実施し、最低賃金の誓約や事業計画通りに実行できているかを確認されます。特に最低賃金を誓約書のとおりアップしていない場合には返還対象になりかねないので留意が必要です。
ここまでが補助金申請から採択までの大まかな流れです。正直『なんだか堅苦しいな…』と感じた方もいるかもしれませんね。しかしながら、今後生き残っていける企業では、しっかりとした事業計画を立て、その計画に基づき実行し、更にトライ&エラーで経験値を積み上げていける企業しか残れない時代に突入している中で、補助金申請を自社の力でしっかり通していけることが求められていると考えられます。補助金申請には自社の現状分析(ビジネスの側面と財務的な側面)、市場の状況、競合分析、成長分野の分析、新規事業の見込とマーケティング活動などを検討した計画を記載する必要があります。事業計画を一から作るような工程を踏む必要があり、更に成長事業を検証することになるので、補助金申請をやりながら、自社の将来計画を立てることに本当に役に立ちます。だからこそ、補助金申請は外部に丸投げせず、自分の会社のこととして取り組むのがおすすめです。結果的に自社の将来計画を見直すいい機会になりますから。



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